「アメーバのようなものや小さな虫が見える」ことを飛蚊症と言います。
「糸くずのようなものが見える」と訴える人もいます。
生まれたての赤ちゃんの眼の中は、均一なゲル状(ゼリー状)のものが眼の中に
ぎっしりと詰まっています。これを硝子体と呼びます。
硝子体は年を重ねるにつれて、特に近視の強い人は早くから、
だんだんと均一なゼリーがさらさらの液体になる液化という現象が起こります。
この時点で、液体の空洞を形成するようになり、飛蚊症を生じます。
さらに、液化が進むと硝子体が眼の底から剥がれ前方に移動します。
これを後部硝子体剥離と呼び、飛蚊症が強くなります。
この変化は、歳とともに起こる経年的変化と言えます。
65歳以上では全体の65%まで、70-80歳代ではほとんどの人に認められると
言われています。近視の強い人や眼に疾患を持つ人は、早くから症状が現れます。
後部硝子体剥離は年齢に伴う変化ですので、治療の必要はありません。
飛蚊症を感じると、うっとおしくなるし不安にもなります。
しかし、眼底検査でほかの病気がないと診断されたときは、
年齢相当の変化と考えて、ゆったりと構えましょう。
飛蚊症を感じたときには、眼のフィルムに当たる網膜に孔(あな)が開いた網膜裂孔(または網膜円孔)のことがあります。
この網膜裂孔が原因で網膜が剥がれる網膜剥離という病気を生じていることもあります。
網膜裂孔であればレーザー治療で外来にて行なうことが出来ます。網膜剥離では、病院に入院して治療が必要となります。
ほかにも、出血やぶどう膜炎により飛蚊症を生じることがあります。
いずれの病気でも発見が遅れると、治療を行なっても障害を残すことがあるので、
飛蚊症を感じたらいつでもすぐに眼科専門医による散瞳(瞳を拡げる)精密眼底検査を受けてください。
散瞳眼底検査
網膜に裂孔ができていても剥離が起こっていない段階のものは、
網膜の裂け目の周囲をレーザーで焼き固めで網膜剥離への進行を防ぐことができます。
進行して網膜が剥離した状態になると手術が必要になります。
網膜の裂け目をふさぎ、網膜の下に入り込んだ液体成分を取り除き、剥離した網膜を元の位置に戻す手術です。
また、網膜の裂け目から出血があったり、進行した網膜剥離の場合には、硝子体を取り除く手術を行ないます。